喫茶去

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく…

小説ごっこ 「何でも屋」 未完成 (気が向いた時に推敲してます_(._.)_)

黄昏

 

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また…落ちた…これで、3度目。

A判定だったのに…

体調も万全だったのに…

何故だ…

もう、浪人生活は許されないだろう。

これから先、どうしたらいいんだろう。

あぁ 消えてしまいたい…。

公園のベンチで、そんな事をぐるぐる考えていた黄昏時、

その人は、現れた。

「どうか、なさいましたか?」

暖かく優しい声と共に、目の前に差し出された缶入りのお汁粉。

戸惑う僕に、その人は、

「まずは、温まらないと…。」と、お汁粉を握らせ、隣に座り、

「ずっと、座っていらしたので、声をかけてみました」と、

柔らかく微笑んだ。

そして、再び、

「どうかなさいましたか?」と問いかけてきた。

答えを待つ気満々のまなざし…

「・・・」

「・・・」

「大学に落ちました…。」

「3度目なんです…。」

根負けした僕は、渋々、絞り出すように答えた。

「そう…」

その人は、少し考えてから、慰めるでもなく、励ますでもなく、

「3度も受験なさるほど、学びたいことがあったんですか?」と聞いてきた。

「いや、そういう訳でも無いんですけど…。」

「そう…」

そう言って、また、少し考えた後、

「人の人生って決まっていて、迷っても、失敗しても、それは、行きつく先にたどり着く為の必然って話もありますよ…。

だとすれば、3度も落ちたって事も、何かの為の必然という事になりますね…。

何の為の必然だったのか、今は、解らないけれど、いつか、

きっと、解る日が来る。と、思いますよ。」とても丁寧に

語りかけた。

そして、黙ったままの僕に、

「今は、全ての道が閉ざされた様な気がしているかも知れないけれど、あなたの未来に続く道は、無数にあるから…。

学歴の為だけの受験には意味がないけれど、道を見つける為に

もう一度チャレンジするならば、それはそれで、有りだし…。

方向転換して、別の道を探すのも有りだし…。

兎に角、どの道を進んでも、あなたがあなたになる為の必然だから…。

どうぞ、長生きして、あなたの未来にたどり着いて下さい…。

な~んてね。」と、

少し照れながら、僕の頭をポンポンして立ち上がり、

「じゃぁ またね。ちゃんと、お家に帰るのよ。」と、言い残して、黄昏の中に溶けて行った。

 

手の中に残ったお汁粉は、暖かく、甘く優しい味がした…。

 

「僕が僕になる。」って…

「じゃぁ またね。」って…

 

誰そ彼…

逢魔が時の出会い…

 

アダージョの語りは、緩やかに僕の心に染み渡り…。

 

お陰で僕はまだ生きている。

 

 

続く…(のか?)