喫茶去

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく…

小説ごっこ 「何でも屋」 未完成

再会 

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桜が咲き…桜が散り…

僕は、生活の為、コンビニでバイトを始めた。

 

「ちゃんとお家に帰るのよ…」

あの人の言った言葉は、多分…

僕がこの町に構えていた6畳一間の部屋の事では無く、両親が住む家という事だったのだと思うのだけれど…。

僕は、まだ、帰れずにいる。

 

僕は、大学入試を口実に全寮制の高校に進み、塾通いの為と言い訳し、この町に住み続けていた。

家から逃げる為だけに…。

彼らは、全てにおいて普通過ぎる僕の事を認めようとはしなかった。

期待し、押し付け、思い通りに作り直そうとした。

限界だった。

だから、壊れる前に逃げ出したのだ。

僕にとって、「家に帰る」とは、僕自身を殺すと同じ意味なのだ。

 

そんなある日のバイト中、

「お久しぶり」と、あの人は、舞い降り、電球を置いた。

実際、舞い降りた訳では無いのだろうけれど、

声をかけられるまで、全く存在に気付かなかった。

(まさに降臨だ…)と、驚き固まる僕に、

「お元気そうで良かった。」とほほ笑んだ。

そして、

我に戻り、「お久しぶりです。」と返して、レジを打つ僕に、

「廊下の電球が切れちゃって…。

自分でも出来るのだけれど、この歳になると億劫なのよね…。」と、独り言の様に話しを続けた。

そして、もう一度、黙って袋詰めしている僕の顔を覗き込みながら、

同じセリフを繰り返した。

何か意図的な圧を感じる…。

多分そういう事なんだろな…。

幸い、この後の予定は無い…。

僕は、試しに、

「バイト もうすぐ上がるんで、その後で良ければ、やりましょうか?」と言ってみた。

すると、案の定、もし、そう言わなければ、きっと、もう一度、

同じセリフを繰り返したであろうその人は、

「助かるわ。ありがとう。厚かましくてごめんなさいね。

あっちで待ってますね」と、とびっきりの笑顔で言うと、

カフェオレを買って、イートインコーナーに消えていった。

 

それにしても…

ここは、前に出会った公園から、バス停三つ離れている。

他にコンビニは有るし、スーパーだってある。

なのに…

この人は、僕が、此処に居る事を知っててやってきたのだろうか?

何故に?

 

 

 

 

続く…(のか?)